1回目 プレゼンは誰のモノ?

~ お客様のためのプレゼン ~
 「さぁさぁさぁさぁ、獲れたてのイワシやで~買うてや~」
 市場の魚屋さんが元気な声を張り上げます。声につられて、店を覗くと砕いた氷の上に何枚もの竹を編んだざるが敷かれ、その上に新鮮そうなイワシが盛られてます。青く光るようなイワシはいかにも美味しそうです。
 「一つもろとくわ!」と言えば、魚屋さんは元気よく「まいど!」と返してくれて商談成立です。
 もちろん、企業の担当者を相手にパワーポイントを使ってビジネスの流れを説明していくのもプレゼンですが、こうした店頭でお客様に直接モノを売るのもプレゼンだと私は考えます。
 どのように商品やサービスを見せてお客様にご納得いただくのか。うまくお客様に納得していただくためには何が必要なのかを考えることはB to BであってもB to Cでも同じで、通るプレゼンを作っていく極意はここにあります。
 一見、プレゼンは作る側(私)のモノだと考えがちですが、プレゼンはお客様のために用意して行うものだから『お客様のモノ』だと考えるようにしましょう。作る側はお客様のモノをご用意させて頂いている。この姿勢に立てば、よいプレゼンを作れるようになります。
 魚屋さんの例で説明すると「氷の上にざるを置いて」というのは獲れたてであるというイメージ作りであると同時に自宅の台所をイメージさせる役目も果たしています。あぁ新鮮でおいしそうだとお客様は感じ始めます。

 「イワシが自分のモノ」になったイメージをお客様が持つと、眼の前にあるイワシは商品ではなく夕飯の食卓の上にある食材に見えてくるのです。
 例えばワードの機能説明だけをしても必要ではあっても欲しいソフトだとは思わないでしょうが「ワードでチラシが作れる」ことを説明するとビジネスに応用したい担当者からすればワードが魅力的なソフトだと感じ始めます。

 つまりプレゼン内容がお客様のモノになっていると通りやすくなるのです。
 ここから学べることは、通るプレゼンを作る側は「自分たちの事情」ではなく、お客様の事情や生活(ビジネス)シーンからプレゼンテーションを考えるようにすることで『よりお客様に理解して頂ける』プレゼンが可能になるということです。
 お客様が「このプレゼンは自分の事を言ってる」と感じてくれた時、採用するかどうかは別として検討してもらえることは確実です。通るプレゼンを作るための第一歩は細かい話ですが作る側が「このプレゼンはお客様のモノなのだ」と意識するところから始まるのです。